大分のお茶とは
ABOUT OITA CHA
山間の霧、豊かな土壌、そして清らかな水。豊かな自然に恵まれた大分県は、知る人ぞ知るお茶の名産地です。なぜ、大分のお茶はおいしいのか?江戸時代から続くその歴史、多様な品種、そして作り手のこだわりに迫ります。

歴史:藩政時代から続く茶産地の形成
大分県における茶の栽培は、江戸時代、各藩の奨励策によって本格化しました。特に臼杵藩では藩主稲葉氏のもと茶業が盛んになり、その伝統は現在の臼杵市周辺の茶産地に受け継がれています。また杵築藩では独自の釜炒り茶文化が花開きました。
田能村竹田のような文人たちが煎茶文化を享受できたのも、こうした生産の土台があったからと言えるでしょう。

風土:山間の霧が生む、豊かな香味
大分県の茶園の多くは、日較差(昼夜の温度差)が大きい山間地に拓かれています。この環境は茶樹の生育を穏やかにし、アミノ酸(旨味・甘味成分)を豊富に蓄えさせます。
また、春先の朝霧が天然の「かぶせ(被覆)」の役割を果たし、茶葉の葉緑素を増やし色沢を良くすると同時に、カテキン(渋み成分)の生成を抑え、まろやかな味わいを生み出します。
主な産地と特長
県内各地に広がる、個性豊かな5つの茶どころ

きつき茶 (杵築市)
宇治伝来の伝統を持つブランド産地。寒暖差と霧が育む豊かな風味と、蒸し製法による香り高い煎茶。

臼杵茶 (臼杵市)
県内一の有機栽培の先進地。化学肥料に頼らない、力強く透明感のある味わいの煎茶が中心。

耶馬渓茶 (中津市)
清らかな水と朝霧に覆われる気候。芳香豊かで滋味深い煎茶や、旨味の強い「かぶせ茶」が作られる。

因尾茶 (佐伯市)
江戸時代から続く伝統の釜炒り茶「因尾茶」が有名。香ばしさと、どこか懐かしい深い味わいが特長です。

豊後大野茶 (豊後大野市)
山間地特有の爽やかな香気を持ちます。近年は紅茶用品種「べにふうき」を使った「和紅茶」の生産も盛んです。
多彩な品種
大分では「やぶきた」を主力としながらも、土地の個性を活かした多様な品種が栽培されています。
- やぶきた: 日本茶の標準ともいえる、甘みと渋みのバランスが良い品種。
- あさつゆ:「天然玉露」とも呼ばれる、旨味が強くまろやかな味わい。
- おくみどり: 甘みとコクがあり、爽やかな香りが特長。
- さえみどり: 鮮やかな緑色と、渋みが少なく濃厚な旨味が人気。
- べにふうき: 紅茶用品種。華やかな香りとしっかりした風味を持つ「地紅茶」が作られる。

現在地と未来:成長する大分茶
大分県の荒茶生産量は741トン(2023年)。全国では中堅クラスながら、その生産量は過去10年で約8割も増加しており、成長を続けています。
有機栽培や「かぶせ茶」といった新たな付加価値への挑戦、そして単一農園・単一品種にこだわる「シングルオリジン」の広がりなど、大分のお茶は新たな時代を迎えています。その一杯に込められた物語を、私たちはこれからも伝えていきます。